ゴミ部屋+孤立死

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作業後

                      休み明けに出社してこないことに異変を感じた同僚が、故人の両親へ連絡。 金曜日の夜中に亡くなり、発見は月曜日の夕方。 室内はエアコンがかかっていたこともあり、腐敗を抑えることができていた。

□死後:推定3日                                                □作業場所:1DKアパート2階                                                      □作業内容:汚布団梱包 遺品整理 不要物分別梱包・搬出 簡易消臭消毒                □作業時間:延2日                                            □作業員:延人数3名                                                      □作業料金:148,000円(税別)(諸経費込)                             □費用負担:遺族

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ヤバい奴

5月も中盤に入ってきているというのに、なかなか暖かさが安定しない。 例年なら、暖かい日はもちろん、暑い日も少なくないはず。 なのに、今年はこんな感じ、いわば“令春”。 何かの摂理が働いてのことか・・・ この寒気が何かに影響しているのかどうか、逆に、何かが影響して寒気がきているのかどうか知る由もないけど、多くの人が曝されているように 肌で感じる気温だけではなく、世の中の空気まで寒々しくなっていることは言うまでもない。 こういう事態になってくると、平穏な日常のありがたみをヒシヒシと感じる。 飽き飽きするほどかわり映えしない毎日、平凡でありきたりの日常、不平不満ばかり吐いていた味気ない日々を・・・ ついこの前のことなのに、そんな日常を懐かしく思ってしまうのは、それほど、このコロナ災難が重大かつ深刻であるということか。 休業や外出自粛で、街の活気も失われている。 “活気”だけでなく、“生気”まで失っている人もいるだろう。 ただ、この期に及んでも、一部には“三密回避”“外出自粛”を無視し、人の迷惑も顧みない輩もいるよう。 “自由”というものの成り立ちや根源を知らず、自制できないことを“自由な生き方”と勘違いし、「経済を回すため」等と自制心の欠落を他人への偽善にすり替え、無責任なクセに困ったことが起こると他人からの支援を当然のように貪るヤバい奴だ。 「越境飲み!?」「越境パチンコ!?」 もう、呆れるし、不愉快だし・・・強い憤りを覚える。 「外出自粛要請」がでていても、在宅勤務が不可能な私は、毎日、出勤している。 現場仕事は少なくなってきているけど、それでも、まだやるべき仕事があるから。 ただ、仕事以外での外出は控えている。 スーパーに食料を買いに行くくらいにして、余計な動きはしていない。 しかも、できるだけ短時間で、レジ精算時をはじめ、店内を歩くときも他の客との距離に気をつけている。 せっかく?時間があるのだから、スーパー銭湯にでも行ってリフレッシュしたいところだけど、そこも営業休止中(営業していても、今は行かないけど)。 しばらくぶりの軽登山も考えたが、人出が多いと登山道は混む。 屋外とはいえ、人と濃厚接触してしまうこともあり得る。 しかも、マスクをしたたままでは呼吸がツラい。 で、結局、断念。 あとは、ソロキャンプか、一通りの道具は持ってるし。 しかし、キャンプ場も混み合ったら意味がない。 シャワー室・トイレ・炊事場などは感染リスクが高いから、やはりダメ。 その代わりに、今年は花見もできなかったし、もう少し暖かくなるのを待ってBBQでもやろうかとも思うけど、人を集めてしまうのはマズいので、これも工夫が必要。 あと、“ソロBBQ”でも気分転換できるはずだけど、趣味を孤高に楽しんでいるように見えるソロキャンプは、ある意味でカッコいいのに比べ、“ソロBBQ”ってのは、「そこまでして炭火で飯が食いたいのか?」っていう風に見られて、なんだか、ネクラっぽい孤独感がでて“ヤバい奴”になってしまいかねない。 結局、できることが思いつかず、人を避けながらウォーキングだけやって その日その日を暮れさせているのである。 休みがとりやすくなったのはありがたいけど、遊び慣れしていない私でも、何のレジャーも楽しめないのは寂しく思う。 また、その理由が仕事減では、身体は休めても気持ちは休まらない。 現場作業が少なくて身体は楽になったのかもしれないけど、逆に精神はツラくなっている。 事態が深刻化していく一方であるうえ いまだウイルスの収束時期が読めていないわけで、先に明るい展望が持てないから余計に。 筋金入りのネガティブ男(私)は、この先のことを考えると 悪い予感しかしない。 そして、鬱持ちであるが故に、その精神は それに過敏に反応しているのである。 何とか今はまだ、少しは余裕があるけど、このまま時が経てば経つほど、私も徐々に追い詰められていくだろう。 ホント、困った・・・ホント、弱った・・・。 「転落死なんですけど・・・」 付き合いのある不動産会社から特掃の依頼が入った。 現場は、繁華街の裏路地にある古い木造アパート。 そこは、車が通れるほどの道幅はないけど、自転車や歩行者の往来は多いエリア。 建物は二階建で、1DKが一階に二戸、二階に二戸。 二階の一室は空室で、もう一室が故人の部屋。 二階へつながる階段は内階段になっており、二階二戸の玄関は一階、路地に面していた。 「うぁ!・・・ヤバ・・・」 目を見張ったのは、その玄関。 玄関ドア外側の下部には、いくつも赤黒い筋。 それは、醤油やソースでもなく、チョコレートでもなし。 そう・・・それは、どこからどう見ても血、しかも大量。 私は、不動産会社から“階段下の玄関で倒れていた”ということは聞いていたが、“外に血が流れ出ている”ということまでは聞いていなかったので、ちょっと驚いた。 「さてと・・・開けてみるか・・・」 私は、何枚かのタオルを細長く折り、ドアの下に重ねて置いた。 そして、不動産会社から借りてきた鍵を挿入。 周囲に人影がないことを確認してから、ゆっくりドアを引いた。 素人ではない私は、ドアを開ける際、ダムが決壊したときのように土間の血が再び流れ出てくることにも用心していた。 しかし、幸い、血だまりの大部分は凝固し、新たに流れ出てくることはなかった。 「うぁ~・・・こりゃ迫力あるな・・・」 眼下には、赤黒い粘液で覆われた玄関土間が出現。 それは、半乾きの状態で滞留した大量の血。 乾いた部分は冷えたブラックチョコレートのように固まり、乾ききっていない部分は煮詰めた赤ワインのように生々しく光っていた。 と同時に、特有の血生臭さがプ~ンと私の鼻をとおり過ぎて、ズ~ンと精神を圧してきた。 「本当に転落死か?」 もっとも大きい血痕は玄関土間にあったけど、そこだけにとどまらず階段から二階故人宅の台所床にも付着。 もともと身体の具合が悪かったのだろう、 “転落”だけではない死因が他にあったことは素人目にも明白。 室内で吐血または下血した後、それで慌てたか、階段を転げ落ちて外傷を負ったものと思われた。 ま、どんなに推理を働かせてところで、私がやらなければならない仕事は変わらない。 自分の中で一応の決着をみた私は、作業のシミュレーションに頭を切り替えた。 「しかし、よりによって、この場所とは・・・」 そこは人通りが多い路地に面した位置。 階段は急で狭く、血が溜まった玄関の土間も狭い。 しかも、くたびれた裸電球はロウソクの灯程度の光しか放たない。 室内からの特掃は極めてやりにくい・・・ドアを開けた状態で外からやらないと無理な構造。 しかし、そうすると、通行人から血痕も作業も丸見え、“なかなかの見世物”になりかねない状況だった。 「別に、悪いことするわけじゃないんだから・・・」 ない頭で知恵を絞ってはみたものの、私は、その作業法以外の妙案を思いつかず。 開き直ってやるしかなく、結局、オープンで作業することに決定。 私は、自己防衛のため“一人の世界”に引きこもり、誰かに近づかれないよう“多忙につき声かけ無用”の雰囲気を醸し出して心理的なバリアを張ることに。 極力、自分の視界を狭くするため、うつむき加減でしゃがみ込み、ほとんど路地側に背中を向けたまま作業をすすめた。 「警察とか呼ばれたらかなわんな・・・」 一人の世界にバリアを張っていても、私の横目視界には幾人もの通行人が入り、耳には近づいては遠ざかる足音が聞こえ、背中にはムズ痒くなるような好奇の視線を感じた。 ただ、ヒマな野次馬はほとんどおらず、大方の人は、軽く目をやるだけで通り過ぎていったと思う。 好奇心旺盛な人の中には視線を止めた人もいただろうけど、そんな気配は感じなかったから、多分、歩を止めて覗き込んだ人はいなかったと思う。 ただ、多くの人は、“血だらけの玄関”と“両手 血まみれの男”を見て、“ギョッ!”としたのではないかと思う。 これで鋭利な道具でも使っていたら、完全に警察を呼ばれていただろう。 事実、小声ながらも、何度か驚嘆の声が上がったのを私の耳は聞き逃さなかった。 「ヤバい奴に見えてんだろうな・・・」 私は、背後を往来する人から見た自分の姿を想像。 その怪しさは、例えようがないくらいの奇妙でインパクトのあるもの。 我ながら、その様がなんともおかしくて、故人には失礼ながら、時々 クスクスと笑いが込みあげてきた。 黙っていても“ヤバい奴”なのに、そいつが一人で笑っているとなると“ヤバい”と通りこして“恐ろしい”。 “そんな風に見られているかも”と思ったら、私は、余計に自分がおかしくて、“ヤバい現場で笑っているヤバい奴”となってしまっていた。 時々、私は、ヤバい奴に変身する。 アブナイ系ではなく、ヘンテコ系の。 特掃現場では、特にそうなる。 ヤバい所が元来の仕事場で、ヤバい状況を片づけるのが仕事なのだから仕方がない。 客観的に見ると、その様は、かなりグロテスクかつ滑稽だと思う。 人の目には、とてもカッコよく見えるものではないけど、それでも、自分では「カッコいい」と思ってしまうときもある。 その由縁は、“使命感・責任感”“依頼者の付託に応えるため”などといった上等のものではなく、“故人の尊厳を守る”“仕事のプライド”などと言った高等のものでもない。 “並の奴にはできんだろ”といった塵芥のような優越感だったり、“俺にしかできんだろ”といったゴミ屑のような職人技だったり、自分以外の他人には興味も価値もないことだったりする。 更に、その由縁がある。 それは、その内にいる“ヤバい奴”。 私の心底には、過激な思考、邪悪な想像、卑猥な妄想(ちなみに、性癖はノーマル)をする奴がずっと居座っている。 例えば・・・・・んー・・・問題あるから書くのはやめておこう。 もちろん、そいつが現実の行動にまで姿を現してくることはない(?)けど(たまにはあるかも、・・・あるな・・・)、人に知れると、人は私から離れていくだろう。 ただでさえ、交友関係が狭い私の場合は、いよいよ一人ぼっちになるか。 ま、この時期なら、人との距離は空いた方がいいし、一人ぼっちでいるくらいの方が安全だし、世の中のためにもなる。 今は、これからくるであろう“寒夏”に耐えきれるかどうか悩むことはさておいて(私は悩んでしまうけど)、また、他人事として無責任に遊ぶことはやめて、我々がやれること・やるべきことを真剣に考え、真摯に取り組むべきとき。 今は、今日の自分のために生きるのではなく、明日の自分のために生きるべきとき。 それが、誰かのためになり、世の中のためにもなる。 常々、“今を大切に”、“今を楽しむ”生き方に憧れ、実践したいと思っている私だけど、それは、今を大切にすることに矛盾することなく、今を楽しむことに通じる部分もある。 我々は、獣や草と同じではなく、本能だけじゃない動力を持たせてもらっている「人間」・・・・・幸せに生きるチャンスをもらっている「人間」なのだから。 とにもかくにも、この“新型コロナウイルス”ってヤバい奴、早いとこ くたばってほしいものである。

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                      『異臭がする』『玄関の隙間から虫が湧いている』

マンションの同フロアに住む住人からの通報で管理会社が玄関扉を開けると…

□死後:推定10日                                                □作業場所:1DKマンション                                                      □作業内容:特殊清掃 遺品整理 不要物分別梱包・搬出 消臭消毒                □作業時間:延2週間                                            □作業員:延人数5名                                                      □作業料金:225,000円(税別)(諸経費込)(解体 内装工事別)                             □費用負担:遺族

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亡くなる直前もラーメン、35年前に姿を消した父の「迷惑な」最期

いま日本は「孤独死大国」になろうとしている。国立社会保障・人口問題研究所の調査で、生涯未婚率が過去最高を更新したとメディア各社が報じた。生涯未婚率は50歳時点で未婚である人の割合を示す。その後、結婚をすることになる人もいるが、まだ少数派。また、配偶者や子どもがいても、「おひとりさま」になることもあるだろう。つまり、誰にとっても「おひとりさま」は他人事ではないのだ。

そこで、懸念されているのが、家で亡くなって死後何日も遺体が発見されないという「孤独死」というデッドエンドだ。民間のシンクタンクであるニッセイ基礎研究所の調査によると、孤独死の数は年間3万人。

そんな悲劇が実際に身内に生じたらどうなるのか。父親の孤独死に直面した会社員の徳山和也さん(仮名・55歳)の生々しい経験をもとに、“縁なき社会”の現状を追った。(ノンフィクション・ライター 菅野久美子)

●アル中、借金、35年会っていない父親

「突然、警察から電話があってオヤジが孤独死していたことを知ったんですよ。土曜の朝の8時半くらいに電話がきて『お父さんが亡くなったんです』と。しかも、電話口の相手は捜査1課だと言うんです。殺人事件を手掛ける部署ですよね。とにかくびっくりしましたね」

寒さの残っていたその日のことを、徳山さんはそう語り始めた。

私と徳山さんとは、彼が依頼した千葉県の遺品整理業者を通じて知り合った。遺族への孤独死の取材というと、一般的な反応としてあからさまに嫌な顔をされ拒否されることが多い。孤独死という結末が、通常ならば他人には触れられたくない家族関係の根幹に関わる部分であるからだ。それは、取材者である私でも、痛いほどよくわかる。

しかし、徳山さんは「孤独死の現状を知ってもらえるなら」と、二つ返事で取材を快諾してくれたのだ。

「たまたま仕事も休みで、趣味のウォーキングか温泉でも行こうかなんて思っていたところに、そんな電話。そのまま父親が住んでいたという千葉県内の警察署に遺体の引き取りに行くことになりました」

徳山さんの父親はかつては大手自動車メーカーに勤務し、製造ラインで自動車の部品を作っていた。しかし、あるときからアルコールに入り浸るようになり、複数の飲み屋などにツケを抱え、消費者金融に足繁く通い借金を作るようになる。しまいには住宅ローンの返済も滞るようになった。

一家の家計は火の車となり、両親は33年前に離婚。当然ながら、徳山さん自身、父親に関する良い思い出は全くない。さらに以後ずっと音信不通だったため、こういってはなんだが、他人同然だという。

そのため、降って湧いたような突然の父親の訃報に徳山さんは困惑した。母親はとうに離婚しているので、実子で長男である徳山さんに警察から連絡がいったのだが、その事態を理解するまでに、少し時間がかかったのは言うまでもない。母親も父親の死を後ほど知らされたが、あからさまに関わりたくなさそうな態度だった。

「だって、今まで散々家族に迷惑をかけてるんですよ。オヤジに対して、心情的には恨みつらみだけしかないんですよ。全く良いイメージがないですからね。だからできるだけ関わりたくなかったんです。どこかで借金しているかもわからないしね」

●焦げ付いた鍋の中にはラーメンが…

徳山さんのようなケースは決して珍しい話ではない。通常孤独死が発覚すると、警察は徹底的に身内の連絡先を調べ上げ、実子だけでなく、甥や姪までもいとも簡単に突き止め、遺体の引き渡しを求めて連絡をしてくる。縁遠い甥や姪にしてみれば寝耳に水であろう。

徳山さんは、父親の遺体の引き取りを承諾し警察に赴いたが、ずっと疎遠な状態が続いていれば、親類による遺体の引き取り拒否も少なくないという。

徳山さんの父親が暮らしていたというアパートに、遺体が発見されて数日後という状況にも関わらず、お邪魔させてもらえることになった。

築30年は下らないと思われる古びたアパートは、日当たりが悪く、室内は寒々しかった。部屋はガランとしていて、モノは少なく、キッチンのガス台には、鍋にラーメンがそのままの状態で置き去りにしてあった。

それが父親の身に起こった出来事を伝えていた。

鍋の中のラーメンは、黒く焦げ付いている。台所の冷蔵庫を見ると、中は空っぽ。父親は、まるで、玄関の方に助けを求めるようにして、突っ伏していたのだという。ガスの火は安全装置が起動して、しばらくして自動停止したのだろう。

その日も、いつも通りインスタントラーメンを作ろうとしたが、突発的な異変に見舞われ、そのまま倒れてしまったということが、現場の状態から一目でわかった。

晩年は年金生活だったようだが、最後まで飲み歩く生活はやめられずに、困窮した末、毎食ラーメンという不摂生な生活を送っていたことが浮かび上がってくる。遺品整理の際に、押し入れから出てきたのは、段ボールいっぱいの袋入りのあのインスタント麺だった。

「このキッチンの床に、オヤジは目を見開いた状態で、仰向けで倒れていたみたいです。ほんと、毎日ラーメンだけの生活だったんだなぁ…」

ため息をつくように、徳山さんはポツリとそうこぼした。その荒れた食生活からは、ごみ屋敷に代表されるような「セルフ・ネグレクト(自己放任)」に陥っていたと推測される。セルフ・ネグレクトは、孤独死の8割を占めると言われており、近年深刻な社会問題となっているのだ。

●孤独死のコスト

たまたま真冬の時期に死後1日で発見されたため、かろうじて遺体の腐敗は進行していなかったのが、せめてもの救いに思われた。これが真夏となると、また状況は違ってくる。何日も遺体が発見されず、床下まで体液が染み込むなどすると、清掃費用が跳ね上がり、ゆうに100万円を超えることもあるからだ。

そして、こうした費用の負担を巡って、遺族と大家がトラブルになるケースも近年頻発している。さらに悪質なのが、後払いであるのをいいことに、親族が費用を払わずに、そのまま逃げるケースだという。

徳山さんは、知り合いの葬儀社の提案で、火葬から納骨までを一括で依頼できるコースを選択した。父親の骨が火葬場から最後にどこにいったのかは知らないし、特に知りたくもないと思っている。

「オヤジが死んでホッとしたというのが正直な心境です。こんな面倒くさい死後のゴタゴタが全部、お金で解決できるなら、それでいいですよ」

これらの費用を捻出する理由は、亡くなったのが曲がりなりにも実の父だったこと。それに尽きるのが徳山さんの偽らざる心境だ。しかし、これが現在の孤独死の遺族を取り巻く現実である。

●35年ぶりに会った父、死の精算は「60万円」

大阪の特殊清掃業者によると、孤独死のほとんどが、こうした離婚後の男性だという。この業者は、孤独死の清掃で一度も遺族が悲しむ姿を見たことがないと断言していた。

徳山さんは言葉を続ける。

「昔のオヤジの勤め先の人に、オヤジが亡くなったって伝えたんです。警察の名刺を見せて『警察の世話になっちゃったよ』ってね。そしたら、『最後までほんとにあいつは世話を掛けるなあ』と言われたんです。自分でも、そう思いますよ。せめて、少しでもお金を残して置いてくれれば良かったのに思いますね」

徳山さんの口からは最後まで、死者を悼む言葉は聞くことはなかった。しかし、これまでの経緯を踏まえると、それも致し方ない気がする。

葬儀社へ支払った埋葬代込みの費用が10万8000円、斎場代(棺桶台と、冷蔵庫2日分込み)が1万9744円。家財道具処分費用が28万円、死体検案書3万5000円。その他にも、父親が滞納したクレジットカード代、アパートのハウスクリーニング費用など、徳山さんは諸々総計すると、60万円近くを支払った。

これが、世間ではあまり知られていない孤独死のコストだ――。そして、それが跳ね返ってくるのは、まぎれもなく血縁関係にある家族である。しかも実子がいない場合は、会ったこともない甥や姪にくることもある。

「死は生の鏡」と教えてくれたのは、孤独死対策で先陣を切っている常盤平団地(千葉県松戸市)の中沢卓実会長だ。いわば“発見されない死”とは、生前築いてきた社会における関係性の「薄さ」の反映といえるだろう。それが先鋭化したのが孤独死という結末に他ならないのだ。

弁護士ドットコムニュース

 

松戸、孤独死急増218人 昨年40歳以上、男性が7割 千葉

松戸市は、昨年1年間に自室内で誰にもみとられずに死亡した、市内の40歳以上の孤独死は218人で、一昨年より40人増加したと発表した。40歳以上の統計を取り始めた平成23年は133人で、27年に178人になり、昨年急増した。

218人の内訳は男性が151人と7割近くを占め、女性は67人。年齢別では40代27人▽50代28人▽60代44人▽70代55人▽80代55人▽90歳以上8人、不明1人-となっている。男性は60代の38人、女性は80代の27人が最多だった。

13年春、市内常盤平団地で、死後3年たった男性=死亡当時(69)=の白骨遺体が見つかり、市が15年から孤独死の統計をまとめるようになった。

当初は孤独死は高齢者の問題とされていたことから50代以上の孤独死統計だったが、中年層にも少なくないことが分かり、23年からは40代を加えた。孤独死の調査・公表は全国自治体でも極めて珍しいという。

常盤平団地の中沢卓実自治会長(83)は「孤独死をなくす努力が追いついていない。30代以下の若年層についても気になる。多くが男性で、地域社会との関わりが薄い男性への対策が急務だ」と話す。市は新年度から料理教室やサークル活動への男性の参加を図り、孤独死の原因とされる地域社会での孤立の防止を進める。

産経新聞 3/4(土)