京都市の50代男性が自宅前の私道に古新聞や雑誌を積み上げて、「ごみ屋敷」となっていたことから、京都市は11月中旬、行政代執行で強制的に撤去をおこなった。
報道によると、男性は京都市右京区の長屋型アパートに在住。玄関前の通路(幅約1.3メートル)に古新聞や雑誌などのごみを高さ約2メートル、幅0.9メートル、長さ約4.4メートルにわたって積み上げていた。奥の部屋で暮らす住民の通行の妨げになっており、緊急時の避難に支障をきたすと指摘されていた。
京都市は6年前に近隣住民から相談を受けて、道路法にもとづいて、市道のごみを撤去した。2014年11月に「ごみ屋敷条例」が施行されて以降は、男性宅に120回以上も訪問・指導してきたが片付けなかったため、今回の強制撤去に踏み切ったのだという。
「ごみ屋敷条例」にもとづいて、私有地に放置されたごみを強制撤去するのは、全国で初めてという。ごみ屋敷そのものは全国的に問題になっているが、今回の行政代執行について、どう見るべきか。「闘う住民と共にゴミ問題の解決を目指す弁護士連絡会」の梶山正三弁護士に聞いた。
●「ゴミ屋敷状態の解消に長期間を要している」
「ゴミ屋敷対策は必要です。京都市の『ごみ屋敷条例』も実情を理解したうえで制定されたものと思います。しかし、必ずしも成功していません」
梶山弁護士はこう切り出した。どういうところが課題になっているのだろうか。
「今回の行政代執行では、120回以上も訪問・指導したうえで、ようやく実施されたことからもわかるように、ゴミ屋敷状態の解消に長期間を要しています。つまり、その間は生活環境の悪化が維持・継続したわけです。
京都市の条例に規定された措置は、(1)支援、(2)軽微な措置、(3)緊急安全措置、(4)行政代執行です。
いささか煩瑣であるうえに、そのたびに『費用の算定』『被支援者への通知』が必要であり、行政代執行に至るまでに、(a)指導・勧告→(b)公表→(c)命令というステップを必要とします。これでは『迅速な処理』など望むべくもありません。強制的措置に至るまでのステップが臆病に過ぎます」
●自転車撤去と同じような「軽微な強制措置」を導入すべき
どのように改善すべきなのだろうか。
「たとえば、駅周辺の放置自転車撤去条例では、定期的に見回り、所有者に対する何らの通知もなく自転車の施錠を破壊し、軽トラ等で撤去・保することを認めています。それと同様の『軽微な強制措置』を取り入れたらどうでしょうか。
そのような迅速な措置を取ることにより、ゴミ屋敷状態をごく初期段階で解消することができます。費用の節約や環境悪化の予防が実現すると思います。また、撤去した廃棄物を一定期間保管することによって、廃棄物の所有権を主張する者とのトラブルも防げるでしょう。
『廃棄物としての認定』『違法な保管状態に対する強制撤去』は、現行の廃棄物処理法の枠内で十分可能です。
そして毎日できるような、ごく初期段階での軽微な撤去は、被支援者に対して一々費用の通知や回収などせずに、公共サービスの一環として税金負担ですることも検討してほしいと思います」
梶山弁護士はこのように述べていた。
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