過労死白書に遺族コラム 家族の会代表「感無量」

「私たちがやってきたことが、このような形で記載されたのは大変感無量。昔から比べると考えもしないところまで発展した」。全国過労死を考える家族の会代表、寺西笑子(えみこ)さん(67)=京都市伏見区=は、初めて作成された過労死等防止対策白書の完成をこう喜んだ。

平成8年2月、飲食チェーン店勤務の夫、彰さん=当時(48)=が厳しいノルマや配置転換など過労の末に自殺。まさか命まで絶つとは思わず、「妻として何もできなかった」と悔やんだ。労災認定と民事訴訟を通じ、当時の社長から謝罪の言葉を勝ち取るまで11年もかかったという。

寺西さんは白書に2つのコラムを寄せた。

《過労死の認定基準はなかったことから泣き寝入りが多く、遺族にとって厳しい時代だった。それでもあきらめず、涙を怒りに変えて、道なき道を切り開いた》

コラムでは、家族会の活動をこう総括しながら、今も全国各地を渡り歩き、大学や高校で労働者の命や働くルールの大切さを教える活動を紹介した。

いまだに課題は山積している。過労死は一向に減らない。これまでは中高年が主流だったが、近年は若年層に広がり、幼い子供が取り残される例が増えてきた。家族会は同じ苦しみを抱える遺児を集め交流会も開いている。

「悲惨な思いをする遺族をこれ以上つくってはならない。これからも社会に警鐘を鳴らしていく」。寺西さんはそう心を新たにしている。

産経新聞  10月7日(金)